家を建てたいけど土地が沈下したり地震で液状化したりしない?裏山が迫っていて土砂崩れや土石流は大丈夫?そんな心配に答えます。

ちょっとマメ知識

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用語解説

地盤沈下 軟弱粘土層液状化 旧河道 緩い砂層 造成地後背湿地 自然堤防 氾濫源堆積物堤防 漏水 洪水ハザードマップ地すべり 地すべり防止区域土石流 土石流危険渓流 砂防指定地がけ崩れ 急傾斜地崩壊危険区域砂防三法と土砂災害防止法活断層基盤岩地盤関係リンク

用語解説

地盤沈下 軟弱粘土層
 地盤沈下は、足下の地面が沈み、建物や道路に被害を与える災害です。地盤沈下の原因の一つに、粘土層から水が抜けて縮んでいく圧密現象があります。住宅の盛土で重みが増えたり、道路の消雪用などに大量の地下水を汲み上げて地下水位が低下することで沈下が起こります。特に、水を多く含む軟らかい粘土層の場合は縮みが大きくなります。豆腐を皿に出しておくと水が抜けて縮んでいくのと同じような現象です。下の右図参照。
 圧密による地盤沈下の進行は、粘土中の水の移動のスピードに左右されますから数年から数十年の間、継続することも珍しくありません。
 県立長野図書館に見られる地盤沈下の状況と長野市北部地域における軟弱地盤(軟弱粘土と緩い砂)の分布を示します。

圧密沈下の概念図.png
県立図書館の基礎周辺の地盤沈下.png
長野市北部の軟弱地盤の分布.png

液状化 旧河道 緩い砂層 造成地

液状化-1.png

 液状化は、地下水に満たされた緩い砂が地震動によって水のように変化する現象です。締まりの緩い砂は粒子と粒子の間の隙間が広く、地下水位が高いと間隙は水で満たされた状態になっています。地震で揺すられた粒子は急速に間隔を詰めてより安定した粒子配置になろうとしますが、間隙にある水は粒子が邪魔して瞬時には移動できません。間隙を詰めようとする砂に抵抗して水の圧力が高まり、ついには砂が水に浮いた様な状態となります。
 液状化した砂は物を支える力を無くし、時には表土やアスファルトを破って地表に噴出します。これが噴砂と呼ばれる現象です。
 液状化しやすい緩く締まった砂は、長野盆地においては、千曲川の両岸や浅川、裾花川の旧河道の流域などに分布しています。(上記の長野盆地北部の軟弱地盤の分布図参照)
 善光寺地震(1847年)や長沼地震の際には、道路や水田で亀裂が口を開き、そこから水と砂、時にはメタンガスが一緒に噴出しました。
 一方、液状化被害は、山を削って谷を埋めた大規模な造成地でも発生しています。谷部の排水処理が十分でなく地下水位が高い場合など、地震で揺すられた際に谷の底で逃げ場を失った地下水の圧力が高まって、砂の液状化と同じ原理で地盤の強度が低下します。このため谷を埋めた盛土が谷の傾斜に沿って滑り出すのです。
 阪神淡路大震災の際には、液状化によって崩壊した盛土が直下の家屋を押し潰し、34人もの犠牲者を出しました。

阪神大震災の仁川盛土崩壊s_image001.png

後背湿地堆積物 自然堤防 氾濫源堆積物
 長野盆地は、戌の満水(1742年)と呼ばれる大洪水をはじめ多くの洪水を経験してきました。
 洪水時に溢れた水は、比較的重い礫や砂などを川の近くに堆積させ、周囲よりやや高い土地を形成します。一方、そこを乗り越えて溢れた水は、細かな粒子をさらに遠くまで運んで、洪水が引いた後も粘土質の土をその場に残します。
 このように洪水によって運ばれた堆積物を氾濫原堆積物といい、砂などが溜まって出来た微高地を自然堤防、粘土などが溜まった低い土地を後背湿地と呼んでいます。
 上記の「地盤沈下」の項で示した長野盆地北部の軟弱地盤の分布図には、千曲川の両側に自然堤防が分布し、その背後に粘土を溜めた後背湿地の広がっている様子が確認できます。
 下の写真は、洪水堆積物の調査の様子と洪水で埋まった車の状況です。

洪水堆積物の調査.png
洪水堆積物に埋まった車.png

洪水-漏水-堤防の決壊
 堤防が決壊するメカニズムには、第一に溢れた水が堤防の上を侵食して崩れる越流侵食、第二に川が堤体の側面を侵食して崩れる側方侵食、そして、第三に堤防の中に浸透した水が堤体や地盤を突き破って崩れる堤防漏水があります。初めの二つに対しては、堤防の上面や側面を補強するなどの対策がとられますが、三つ目の堤防漏水が厄介な問題です。
 平成18年7月の洪水は、長野盆地の出口に位置する立ヶ花で計画高水位*まであと7cmに迫り、この時、飯山盆地と長野盆地であわせて40ヵ所以上の堤防漏水が発生しました。
 堤防漏水の原因は、水位の上昇で圧力の増した河川水が堤体の内部や下部の基盤層に浸透して、堤体の反対側の側面や地面、また、側溝などから噴出するパイピングやボイリングと呼ばれる現象です。下の写真参照。
 堤防漏水は大きな洪水でなくとも水の滲み出しなどの兆候を確認できることがあります。普段から近くの堤防に関心を持って、大水が出た際に注意深く観察することで事前に対応できる災害といえるでしょう。
 長野市は、平成19年に洪水ハザードマップを作成し全家庭に配布しました。堤防がどこで決壊するかで浸水予測は異なりますが、洪水の程度を知るには有効な資料です。長野市危機管理防災課で入手できます。

平成18年の洪水と堤防の下を回った基盤からの漏水.png
基盤漏水によってマンホールから噴出する水.png

-【計画高水位(けいかくこうすいい)】洪水を安全に流すように川幅や堤防高さ、橋の高さを設計する際に基本となる洪水流量を計画高水(たかみず)流量といい、それに相当する河川水位を計画高水位と呼ぶ。

地すべり 地すべり防止区域
 地すべりは、土地の一部が地下水などに起因して、すべり面に沿って移動する自然現象です。過去の経験から移動の速さは一時間に4メートル程度で、一定以上の降雨や小崩壊、湧水などの前兆現象に気をつけることで避難できることの多い災害です。
 長野県には現在308箇所の地すべり防止区域が設定されています。平成13年に施行された「土砂災害防止法」では、地すべり区域の下端から最大で60mの範囲を特別警戒区域に指定することが示されています。
 長野県では、平成10年からの7年間で200ヶ所を超える地すべりが発生しており、新潟県についで全国二番目の多さです。これは、第三紀層と呼ばれる数百万年前に堆積した砂岩や泥岩など軟質な岩盤が多く、これらが断層を伴う地殻変動によって傾斜したり脆くなったりして、潜在的に地すべりの起きやすい性質をもっているためです。昭和60年7月に発生した地附山地すべりは、古い地すべりが平年の降水量の二倍を超える梅雨によって再活動したものです。

浅川一之瀬地すべり
国道19号安庭の崩壊.png

 また、地すべりの中には、豪雨時に下端に位置する川や池の水位が上昇して起きる地すべりがあります。
 豪雨や洪水などによって川や池の水位が増すと、地すべり内部の地下水位も上昇してすべり面に作用する水圧が高まります。このために土の強度が低下し、地すべりが起きやすくなるのです。
 もっとも危険性が高くなるのは洪水の直後です。
 洪水時には増水した川や池の水の荷重が多少とも地すべりの動きに抵抗する働きをしますが、洪水が引くとこの抵抗力は消滅し、一方で地すべり内の地下水は容易に低下しない状態が継続します。洪水直後に地すべり内に残される水圧を“残留水圧”と呼び、この残留水圧によって強度が低下したすべり面だけが残されるために地すべりが発生する場合があります。

残留水圧の作用による地すべりのメカニズム.png

土石流 土石流危険渓流 砂防指定地 砂防ダム
 土石流は、山腹が崩壊して生じた土石や渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象です。流下速度は時速20kmから60kmにも達することから、発生してから避難することは容易ではありません。
 日本の屋根といわれる長野県には、砂防指定地が2,600箇所以上、5戸以上の人家に被害を及ぼすおそれのある土石流危険渓流が6,000ヶ箇所以上あり、これは広島、兵庫に続いて全国で三番目の多さです。
 平成21年8月に発生した諏訪の豪雨災害では砂防ダムが多くの土石を堰き止めて被害の軽減に役立ちました。一方でダムは満杯となり、今後の砂防機能が危ぶまれます。長野県にはこのように機能を果たさなくなった砂防ダムが無数に存在します。

諏訪土石流で満砂となった砂防ダム.png
諏訪土石流を堰き止めた砂防ダム.png

平成11年、梅雨前線の豪雨によって広島災害と呼ばれる土砂災害が発生しました(災害件数325件、死者24名)。この災害の特徴は、時間雨量81mmという記録的な雨にくわえて、山すそに開発された住宅地に流れ込んだ土石流が被害を大きくしたことでした。
 広島災害の教訓を基に、国は土砂災害のおそれのある区域の指定や開発行為の制限を含む「土砂災害防止法」を策定しました。

岡谷湊3丁目小田井沢川で発生した土石流.png

 この法律で指定された「土砂災害警戒区域」とは「土石流の発生のおそれのある渓流において、扇頂部から下流で勾配が2度以上の区域」をさします。(下図参照)
 土石流の発生予測の技術は、残念ながら確立されていません。岡谷市では平成18年の土石流災害を受けて避難を始める基準の時間雨量を独自に30mmとしました。
 土石流の素因となる地形地質の特徴には地域性があります。過去の災害履歴を元に地域独自の警戒基準となる降雨量を設定することが有効と考えます。

土砂災害防止法による警戒区域.png

がけ崩れ 急傾斜地崩壊危険区域
 がけ崩れは、斜面がとつぜん崩れ落ちる現象です。盛土のような人工的な斜面で生じるのり面崩壊と自然斜面で生じる斜面崩壊に分類されます。
 地すべりに比べると前ぶれが少なく、スピードも速いのでいったん発生すると避難することが難しい災害です。がけ崩れは、台風や梅雨前線などの豪雨によって発生することが多く、水と密接に関係しています。また、地震による震動で生じることもあります。
 長野県には8,000箇所以上の急傾斜危険箇所があり、そのうち700箇所あまりが急傾斜地崩壊危険区域(背後に傾斜30°以上の斜面があるなど下図参照)に設定されています。
 斜面を構成する地盤はコンクリートのように均質ではありません。場所によって堅さやしまり具合も違えば、砂っぽかったり割れ目が不規則に入っていたりします。このような斜面に水が滲み込んで、地盤をいっそう軟弱にしてしまい崩壊に至るメカニズムは一様ではありません。
 土石流と同様に、その発生予測の技術は確立されていませんが、がけ崩れの素因となる地形地質の特徴には地域性があります。
 過去の災害履歴を元に地域独自の警戒基準となる降雨量を設定することが有効と考えます。

土砂災害防止法による警戒区域.png

急傾斜地(長野県).png

砂防三法と土砂災害防止法
 砂防三法とは、砂防法(明治30年)、地すべり等防止法(昭和33年)、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年)を総称して使っている言葉です。(正式名称ではありません)
 砂防三法に基づき指定される区域は、地すべり防止区域砂防指定地、急傾斜地崩壊危険区域と呼ばれて、土砂災害(土砂流出、土石流、地すべり、がけ崩れ)を起こす要因がある区域であり、切土、盛土などの行為が法律に基づき制限されます。
 これら指定区域で開発などを行う場合は、県知事の許可が必要となります。
 しかしながら、新たな宅地開発なども進んで危険箇所は年々増加し、対策には膨大な時間と費用を要します。砂防三法が砂防ダムなどのハード的な安全対策を主としているのに対して、土砂災害防止法は、危険性のある土地を明らかにして、避難体制の整備や新期住宅の立地規制などのソフト対策を充実していくことに重点を置いた法律です。
これに関する国交省の関連サイトは以下の所です。
http://www.mlit.go.jp/river/sabo/linksinpou.htm
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/05/050328_.html

活断層
 活断層とは、最近数十万年間に、概ね千年から数万年の周期で繰り返し動いてきた跡が地形に現われ、今後も活動を繰り返すと考えられる断層のことです。
 長野盆地には長野盆地西縁断層と呼ばれ、塩崎から茶臼山、小松原を越えて延々と盆地の西縁に沿って県庁の真下、城山の東の縁を通り、豊野から立ヶ花に至る断続的な活断層が存在します。
 掘削調査の結果、これらの活断層は立ヶ花付近において、紀元以降、善光寺地震を含む2回の活動があったことが判っています。

長野盆地西縁部の活断層模式図.png
小松原のトレンチに現われた活断層.png

基盤岩
 基盤岩とは、締りの緩い砂や柔らかな泥に対して固結した岩盤の総称です。長野盆地では、およそ200万年より以前に堆積した砂岩や泥岩などの堆積岩や地附山の地すべり災害を起した裾花凝灰岩、柴石で有名な溶結凝灰岩などの火山噴出物が基盤岩となっています。また、数十万年まえに噴出した飯綱火山などの熔岩も硬く固結しているので基盤岩と呼ばれます。
 これらは元来は硬い岩石ですが、長野盆地西縁断層の影響などで亀裂が発達して脆くなり、地すべりや崩壊を起しやすくなっている特徴があります。

裾花凝灰岩.png
松代の柴石.png
私の名刺です

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